研究概要 |
私は脳神経系に多く存在するスフィンゴ糖脂質であるガングリオシドの機能を解析するため、抗ガングリオシド抗体で免疫沈降する際に共沈してくるガングリオシド会合タンパク質の単離を試みてきた。そして小脳顆粒細胞においてガングリオシドGD3が細胞内シグナル伝達分子であるsrcファミリーキナーゼLyn,ラフト膜貫通タンパク質Cbp,三量体Gタンパク質Goαと会合していることを報告してきた。 小脳初代培養細胞を抗ガングリオシドGD3抗体で処理するとLynが活性化すること、CbpはsrcファミリーキナーゼLynの基質になりうることをすでに見出しており、小脳初代培養細胞を抗ガングリオシドGD3抗体で処理すると、Cbpがチロシンリン酸化されることを確かめた。 今年度は、ショ糖密度勾配遠心法によってCbpは小脳成長円錐画分に存在することが示唆されたので、実際に成長円錐に存在しているかどうかを免疫電顕法によって確かめた。小脳から調製した成長円錐画分を、Cbp抗体および成長円錐マーカーであるGAP-43の抗体を用いて金コロイドによる二重標識を試みた。その結果、GAP-43陽性の成長円錐膜上にCbpも局在することが確認できた。ラフト膜貫通タンパク質CbpはSrcファミリーチロシンキナーゼのネガティブフィードバックレギュレーターであることが知られており、本研究は、小脳神経細胞成長円錐の脂質ラフトにおいてsrcファミリーキナーゼLynの活性を制御している可能性を示している。
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