研究概要 |
私は脳神経系に多く存在するスフィンゴ糖脂質であるガングリオシドの機能を解析するため、抗ガングリオシド抗体で免疫沈降する際に共沈してくるガングリオシド会合タンパク質の単離を試みてきた。そして小脳顆粒細胞においてガングリオシドGD3が細胞内シグナル伝達分子であるsrcファミリーキナーゼLyn,ラフト膜貫通タンパク質Cbp,三量体Gタンパク質Goαと会合していることを報告してきた。さらに小脳初代培養細胞を抗ガングリオシドGD3抗体で処理するとLynが活性化すること、CbpはsrcファミリーキナーゼLynの基質になり、成長円錐に存在することを見出した。そこで今年度は、小脳成長円錐膜を抗ガングリオシドGD3抗体で処理したときにおこるシグナル伝達を解析した。その結果、68kDaの強いチロシンリン酸化が検出され、それがパキシリン118チロシンの特異的リン酸化であることを突き止めた。パキシリンのリン酸化はアクチン重合を制御することが知られていることから、小脳顆粒細胞を抗ガングリオシドGD3抗体で処理したときにおこる変化について調べたところアクチン重合にともない神経突起伸長が起こることを見出した。これはガングリオシドGD3がパキシリンリン酸化を介して成長円錐を制御していることを示唆している。
|