研究概要 |
CUT-homeodomain転写因子は、SATB1、CDP/Cux/Cut、HNF6αなど、1〜3個のCUTドメインと1個のhomeodomainを有する転写因子群であり、免疫細胞の分化など動物固有の高次機能に関わる。本研究では、CUT-homeodomain転写因子が、DNA結合ドメインの組み合わせを変化させることによって機能制御を行う機構の解明に向けて、各CUTドメインとhomeodomainによる総合的なDNA認識機構を、生化学的研究やNMRおよびX線結晶解析法による構造生物学的研究によって明らかにすることを目指す。 本年度は、先ず、SATB1のN末端のCUTドメイン(CUTr1)とhomeodomainの融合タンパク質やCUTr1-CUTr2-homeodomnain領域を調製した。さらに、これらのタンパク質とDNA(SATB1の認識コンセンサス配列を含む;Purbay et al.,2008,Nucleic Acids Res.36,2107.)の複合体を調製した。これらについて、結晶化を試みた。今のところ、解析可能な結晶を得ていないが、さらに結晶化条件の検討を進めている。 これと並行し、NMR法によってSATB1のhomeodomainの立体構造解析を行い、3本のヘリックスからなる構造を明らかにした。さらに、CUTr1-homeodomain融合タンパク質のNMRスペクトルが上記DNAの添加によって変化する状況と、homeodomainのNMRスペクトルがDNA添加によって変化する状況を解析し、CUTr1のNMRスペクトルの変化の状況(Yamaguchi et al.,2006,J.Biol.Chem.281,5391.)とも比較・検討することにより、コンセンサスDNA配列の認識においては両方のドメインがDNAに接触することを見いだした。この内容について、学会発表を行った。
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