CUT-homeodomain転写因子は、SATB1、CDP/Cux/Cut、HNF6αなど、1~3個のCUTドメインと1個のhomeodomainを有する転写因子群であり、免疫細胞の分化など動物固有の高次機能に関わる。本研究では、CUT-homeodomain転写因子が、リン酸化・アセチル化等の翻訳後修飾や、細胞周期に併せたプロテオリシスによって、実効的に寄与するDNA結合ドメインの組み合わせを変化させることによって機能制御を行う機構の解明に向けて、各CUTドメインとhomeodomainによる総合的なDNA認識の機構を、生化学的研究や構造生物学的研究によって明らかにすることを目標とする。 本年度は、等温滴定型熱量計を用いて、SATB1のCUTr1ドメインとhomeodomainによるDNA結合の協同性の解析を行った。1つの認識配列(CTAATA)を持つDNAに対するCUTr1ドメイン、homeodomain、およびCUTr1-homeodomain融合タンパク質の結合を解析した結果、1)いずれのドメインも1:1のstoichiometryで結合し、発熱すること、2)CUTr1ドメインとhomeodomainの発熱量の和が、CUTr1-homeodomain融合タンパク質による発熱量に等しいことが判明した。すなわち、CUTr1とhomeodomainがCTAATA配列に対して、結合部位に対して競合的な関係にあるのではなく、協同的な関係であることが明確に示された。 さらに、これらのドメインそれぞれの認識配列の決定を、配列をランダム化したDNAと磁気ビーズを用いて行った。その結果、CUTr1ドメインの場合のみ、TAATコア配列が選別されることが判った。すなわち、CUTr1ドメインが、homeodomainに比べ、より主導的に配列認識の多くを担うと考えられる。
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