私達は、非ゲノム損傷ストレスがストレス応答性MAPキナーゼを介して、Cdc25B分解を誘導し、細胞のG2期停止を引き起こす機構を発見し、その制御機構を解析している。これまでに、SA変異体解析によりSer101/103配列が分解に重要であること、また、この分解は、ユビキチン・プロテアソーム分解経路を介しており、SCF^<βTrCP>複合体がE3であることを示唆する結果を得ている。本年度は、これらの結果を踏まえ、以下の解析を行った。 1、Ser101、Ser103リン酸化抗体を用いた解析 Ser101、Ser103のリン酸化抗体を作成し、リン酸化状態を調べた。Ser101については、定常状態でもリン酸化が検出され、ストレスによりリン酸化が増強された。Ser103については、定常状態でのリン酸化は検出されず、ストレス特異的にリン酸化が検出された。インヒビターを用いた実験から、Ser101はJNKとp38MAPKの標的である一方で、Ser103はJNK特異的にリン酸化されていることが分かった。 2、βTrCP結合部位の同定 Ser101/103周辺配列は、既知のβTrCP結合配列に類似しており、保存されているアミノ酸を変異するとβTrCPと結合が見られなくなった。しかし、βTrCPは、結合類似配列由来のリン酸化ペプチド、DAGLCMDpSpSM(pSはリン酸化Ser)、に結合しなかった。そこで、DAG上流のPEST様配列内の8個のSerをAlaに変異したところ、結合が減弱し、PEST様配列内の8個のSerとSer101/103全てをAspに変えたペプチドはβTrCPと結合した。以上により、Cdc25BはPEST様配列およびSer101/103配列を含む新規結合配列のリン酸化を介して、βTrCPにより安定性が制御されていることが明らかになった。
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