研究課題
DYRKファミリーキナーゼはMAPキナーゼと構造上近縁でありながら、その生理的機能の解析は余り進んでいない。特にDYRK1Aはヒトクロモソーム21番のダウン症候群責任領域に存在して同症候群の発症に関与することが示されており、その生理的ターゲットの同定は重要な課題である。まず、哺乳類培養細胞に過剰発現させたDYRKと結合するタンパク質を共免疫沈降によって単離し、特異的抗体あるいはマススペクトルによって同定した。その結果、DYRK1B,DYRK4には分子シャペロンHsp90・Cdc37が結合することがわかった。一方、DYRK1Aには種間で良く保存された機能未知のタンパク質DYRK-BPが結合した。DYRK-BPはDYRKファミリーのうちのDYRK1AとDYRK1Bに特異的に結合し、DYRK2,DYRK3,DYRK4とは結合しなかった。各種欠失変異体を用いた実験から、DYRK-BPはDYRK1AのN末端領域に結合することがわかった。次いでDYRK-BPと相互作用するタンパク質とその細胞内リン酸化状態をマス・スペクトルを用いた網羅的リン酸化プロテオームの手法により解析した。その結果、95%の信頼度で約250の結合タンパク質とそのリン酸化サイトが同定された。その中には細胞骨格タンパク質や分子シャペロン等の存在量の多いタンパク質、キナーゼや転写因子等のシグナル伝達に関わるタンパク質が多かった。特に結合量と特異性の高いタンパク質は分子シャペロンCCT(TCP-1)を構成する8つの異なるサブユニットのうちの7つ、及びMEK Kinase 1(MEKK1)であった。実際、細胞内のCCT及びMEKK1がDYRK-BPと特異的に結合することが共免疫沈降実験によって確かめられた。同定された結合タンパク質およびそのリン酸化状態がDYRK-BPやDYRK1Aの機能とどのような関連を持つのかを検討中である。
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Molecular and Cellular Biochemistry 316
ページ: 127-134