研究課題
DYRKファミリーキナーゼはMAPキナーゼと構造上近縁のプロリン指向性セリン・スレオニンキナーゼであるが、その生理的機能の解析は進んでいない。ヒトの5種類のDYRKファミリーキナーゼのうち、DYRK1Aはクロモソーム21番のダウン症候群責任領域に存在して同症候群の発症に関与することが示されており、その生理的ターゲットの同定は重要な課題である。昨年度までの本研究課題により、DYRKと相互作用する細胞内タンパク質の同定を行い、DYRK1B及びDYRK4には分子シャペロンHsp90及びCdc37が、またDYRK1A及びDYRK1BにはDYRK-BPが、それぞれ特異的に結合することを明らかにした。本年度はDYRK-BPの生理的な機能の解析を行なった。DYRK-BPは種間で非常によく保存されたWD40タンパク質で、細胞全体にほぼ一様に分布していた。DYRK1Aを細胞に過剰に発現するとDYRK-BPはDYRK1Aと共に核内に局在するようになり、DYRK1AがDYRK-BPの細胞内局在を制御することが判った。DYRK1Aは大きくN末端領域、キナーゼ活性領域、C末端領域に分けられるが、DYRK-BPはDYRK1AのN末端領域に特異的に結合した。一方,DYRK-BPはN末端ないしC末端のいずれを欠いてもDYRK1Aとは結合せず、その分子全体がDYRK1Aとの結合に必要であった。またDYRK-BPの細胞内量を特異的なsiRNAの導入によって抑制すると細胞の増殖が顕著に阻害されたことから、細胞の増殖にDYRK-BPが必須であることが示唆された。以上の知見から、ダウン症におけるDYRK1Aの過剰発現が細胞内のDYRK-BPの活性・発現パターンに影響を及ぼし、それがダウン症の細胞生理に関わる可能性が考えられる。細胞内でのDYRK-BPの生理的機能の詳細についてさらに解析を進めている。
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Science Signaling 2
ページ: ra26
Cellular and Molecular Life Sciences 66
ページ: 1840-1849