研究概要 |
ゲノム情報の正確な複製と子孫への伝達のために,細胞内には多様なゲノム情報安定維持機構が存在する。本年度は,高度好熱菌の組換え修復系ならびに塩基除去修復系の反応機構の分子メカニズムの解明を行った。まず,昨年度決定した5'-3'エキソヌクレアーゼRecJ全長の結晶構造に基づいて,新たに同定したOB-foldドメインを欠く変異体とOB-foldドメインだけからなる変異体を作製した。その解析結果から,このドメインがRecJの一本鎖DNA特異性を担っていることを明らかにした。また,真核生物のRad52ホモログであるTTHA0081を精製し,一本鎖DNAに特異的に結合することを確認した。しかし,その遺伝学的解析からは組換え修復以外の修復経路にも関わる可能性が示唆された。次に,塩基除去修復経路で生じる脱塩基部位でDNA鎖を切断するAPエンドヌクレアーゼ(EndoIV)の結晶構造を2種類の好熱菌EndoIVについて決定し,変異体解析の結果もふまえて,新たなDNA認識ループをもつEndoIVの存在を初めて明らかにした。さらに,脱塩基部位が除去されたあとのギャップをうめる酵素として働くDNAポリメラーゼX(PolX)について,その立体構造をX線結晶解析法により決定した。そのコンフォメーションはすでに報告されている放射線耐性菌のPolXのものとは大きく異なっており,基質が結合した状態の構造を表していると考えられた。また,PolXに3'-phosphatase活性があることも見いだした。
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