<研究の目的> L-カルノシン(β-alanyl-L-histidine)は古くから知られたジペプチドで、脳や筋肉に比較的高濃度で存在し、効酸化作用や神経細胞の生存維持作用などがあるといわれているが、実際の生理機能は確立されていない。最近我々は、L-カルノシンが脳内ヒスタミン神経系に作用することなどを見出した。本研究では、カルノシンの生理機能の分子的作用基盤を明らかにする目的で、主としてカルノシン分解酵素CNDP2の構造と機能の解析を行う。 <研究実績の概要> (1) CNDP2の立体構造解析とLidドメインの機能 我々はすでに、CNDP2と基質アナログである阻害剤ベスタチンとの複合体の立体構造を決定したが、ベスタチンはクレフトの奥に存在しており、induced fitを予想させる。そこで、阻害剤非存在下での結晶化を試みているが、結晶化には至っていない。一方、最近同じファミリーに属するCNDP1の構造が阻害剤非存在下で解かれたが、これはopenな構造をしており、上記の予想を支持する。また、我々はすでに、LidドメインのHis228が活性に必須であることを見出しており、その解析をさらに進めるための複数のミュータントを作成した。現在、その性状を解析中である。 (2) カルノシン、CNDP2と酸化ストレス CNDP2はSH試薬に感受性であることから、活性に関与するCysの同定を行っているが、複数個所のCysが関与する可能性があるため、複数個所のミュータントを作成し、その活性について検討している。 (3) CNDP2と、もうひとつのカルノシン分解酵素CNDP1の比較解析 我々は、主としてCNDP2を解析対象としてきたが、今回、同じファミリーに属するマウスとヒトのCNDP1を大腸菌で発現させるため種々のベクターにクローニングし、発現、精製のための条件を検討している。
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