研究概要 |
昨年度の研究成果から、ガレクチン9のノックダウンに伴うケモカインの発現変化が、使用したsiRNA mixture(4種類のsiRNA[siG9-5,-6,-7,-8]の混合物;Dharmacon社製)のうち、siG9-6のオフターゲット効果によるものであることが明らかになった。siG9-6を除く3種類のsiRNA混合物(siG9-5,-7,-8)を用いて、IFN-γによるケモカイン(CXCL9とCXCL10)産生誘導に対するGal-9のノックダウン効果を再検討した結果、CXCL9の産生はsiRNA処理によって約1/5に減少したがCXCL10の産生は影響を受けなかった。Dharmacon社のsiRNAの使用濃度は100nMであるが、siRNAの濃度が10nMを越えるとIFN様作用が現れやすくなることが知られている。このため、低濃度で十分なノックダウン効果が得られる新世代のsiRNA(Ambion社製)を用いて、ガレクチン9のノックダウンを行った。その結果、三種類のsiRNAがオフターゲット効果の現れない低濃度(1nM以下)において、十分なノックダウン効果を示した。しかし、これらのsiRNAは血管内皮細胞におけるIFN-γによるCXCL9の発現誘導に対して抑制効果を示さなかった。今年度の研究結果からは、血管内皮細胞におけるガレクチン9の機能を推察する手掛かりは得られなかった。siRNAによるノックダウンは極めて有用な手法であるが、非特異的な応答を引き起こす可能性があり、結果の解釈には注意が必要である。血管内皮細胞における内在性ガレクチン9の機能を明らかにするために、プロテオーム/グライコーム解析等の手法とノックダウンを組み合わせて検討を進める必要があると考えられるため、来年度はガレクチン-9と相互作用する血管内皮細胞の細胞内タンパク質の同定を目標として研究を継続する予定である。
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