バクテリアベん毛モーターの回転運動のメカニズムに迫るため、固定子1個による運動の素過程を解析することを研究目的とし、平成21年は以下を行った。 1.回転計測系と解析系の改良:従来の光センサを用いた計測系に加えて開発してきた高速カメラによる回転計測系では、画像解析の精度と速度が重要なファクタとなる。昨年から開発してきたソフトウエアの自作を進め、位相差像だけでなく、明視野観察などのより一般的な計測システムでも、実用的な精度と速度で解析できるシステムを構築した。また温度制御実験で見出したトルクステップは個々の固定子の挙動を反映していると考えられるため、より客観的に評価するためのプログラムも作成し、温度応答のより詳細な解析を進めた。 2.固定子変異体の温度依存性:キメラモーターに加えて、2種の固定子変異体についての温度依存性を計測した。いずれの変異体も元のモーターと比較して、より低い温度でトルク変化が見られ、温度感受性が高くなっていることが示唆された。またトルク変化はステップ状に起こり、その大きさにも変化が見られた。開発したステップ解析アルゴリズムでの評価を進めており、元のモーターも含めて、温度依存性のメカニズムを統一的に理解したい。 3.細胞内分子イメージング:エバネッセント照明を導入したイメージング顕微鏡を用いて、GFP融合タンパクのイメージングを行った。蛍光強度のステップ状変化について、ステップ解析を行い、GFP融合タンパクの細胞内イメージングが、既報の通り可能であることを確認した。
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