研究概要 |
セレン(Se)はヒトを含め多くの生物の生存に必須の微量元素であり、細胞内では主にセレノシステイン(Sec)とよばれるアミノ酸としてタンパク質に取り込まれたかたちで存在している。Secは21番目のアミノ酸として知られており、リボソーム上で遺伝暗号にしたがってタンパク質に取り込まれるが、20種類の基本的なアミノ酸とは異なり、固有のタンパク質群をもちいてtRNA上で合成され、セレン含有タンパク質の遺伝子中の終止コドン(UGA)をSecコドンに読みかえて正確に挿入される。 この特有なSec生合成の構造基盤を明らかにするために、関与するタンパク質およびタンパク質複合体のX線結晶構造解析を行った。tRNA^<Sec>は、通常のtRNAとは異なる配列的・立体構造的特徴をもったtRNAで、Sec生合成経路で中心的な役割を果たす。真核生物および古細菌において、Ser-tRNA^<Sec>のリン酸化に必須の酵素O-ホスホセリルtRNAキナーゼ(PSTK)とtRNA^<Sec>との複合体の結晶構造解析に成功した。PSTKはtRNA^<Sec>に特有のDアームの構造を主に認識し、他のtRNAと識別していることを明らかにした(Mol.Cell,2010)。また、Secの生合成において主要な役割を担うセレノシステイン合成酵素(SelA)およびセレノシステイン特異的延長因子(SelB)について、構造解析に成功した。この成果について現在投稿準備中である。
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