繰り越しも含めた平成22-23年度は、研究の総括を頭に置きつつ、以下の研究と論文作成を行った。 (1) 20-21年度の研究で主な対象としたタウの部分とは異なる部分をターゲットとした合成ペプチドとそのリン酸化体を用いて、リン酸化のタウ分子凝集に対する効果の別の側面を明らかにする解析を行った。それにより、速度過程での影響を顕著にクローズアップするなどの結果を得た。 (2) (1)の解析には、これまでの研究で用いた解析法を、異なるペプチドの凝集においても適用できるように拡張した。 そのために、まず凝集速度解析法と臨界濃度決定法を、凝集特性が全く異なり扱いにくいペプチドの場合でも、より効率的に行う手順を確立した。そのために、凝集の誘導条件、プレートリーダによる蛍光測定、超遠心法の改善などを行った。 (3) また、電子顕微鏡と原子間力顕微鏡で得た凝集体像からサイズ・長さ・螺旋のピッチなどの構造情報を抽出する手段を、自動検出プログラムの作成を含めて構築した。さらに、X線回折により得たデータを、分子モデリングした凝集体構造から予測した回折像と詳細に比較する手法の確立を進め、顕微鏡法で得た情報とも突き合せて、凝集体構造の分子構造解析の標準的方法とすることを企図した。 (4) 他方で(2)-(3)で発展させた手法を、20-21年度に扱った第一のペプチド領域の解析にフィードバックし、この研究を完成させて、2件の論文発表を行った。そこでは、凝集を左右する因子として個別の分子間力がどのように寄与するかを提案することができた。 (5) 部分ペプチドで得た結果を全長タウの場合に拡張する研究手段の一つとして、細胞内で全長タウの凝集を観測する人工タンパク質を作成し、その細胞内発現等に成功した。
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