研究課題
我々は細胞骨格(ストレス線維:アクチン線維束)が力の伝達媒体として関与することを発見した(Hayakawa et al., 2008)。この時点で、力の伝達媒体であるアクチン自身が力学受容の装置として働いている可能性はあったが、科学的に検討することはできなかった。その後アクチン繊維が力学受容機構を内在していることを示すデーターを得ることができた。この結果はチャネル以外に機械受容する実体が存在することを示すもので論文投稿準備中である。しかしながら、力学受容機構であるアクチン繊維がどのようなメカニズムで動作しているかは依然不明である。この分子的メカニズムの解明が本研究のテーマである。コフィリンによるアクチン繊維の脱重合作用が張力により制御されているメカニズムとして以下の2つの仮説が考えられる。1)張力によるアクチン繊維の構造変化がコフィリンのアクチン繊維への結合を制御している。2)張力の有無にかかわらずコフィリンはアクチン繊維に結合し、アクチン繊維の張力はそれに結合したコフィリンの酵素活性を調節している。初年度の研究から張力依存的にコフィリンのアクチン繊維への結合が起こることを示すことができた。この実験結果は1)の仮説を支持するものであった。またコフィリンの結合の時間と頻度の分析も行った。この実験からアクチン繊維への張力を減少すると、コフィリンの結合サイトがあらわれて、コフィリンの結合が促進することを示すものであった。アクチン線維の先にビーズをつけてアクチン線維のねじれのゆらぎを分析するシステムを開発した。アクチンのねじれの分析とコフィリンのこのねじれゆらぎへの作用の分析を始めた。
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第3巻「動物の「動き」の秘密にせまる」 : 接着構造と細胞骨格を用いた細胞移動(共立出版)
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