1. ラフト領域形成における「脂質と脂質アンカー型の受容体の協同的な相互作用」と「脂質膜内での液晶相一秩序液晶相の相分離に似た協同的過程」についての仮説を検証するために、細胞外からシグナル入力のないときにおいて様々なGPI-アンカー型受容体の会合数を1分子観察により定量的に見積もった。そのために、非常に低レベルで発現しているGPI-アンカー型受容体を非常に高効率で蛍光色素などでラベルする実験系を確立し、様々な会合能を持つタンパク質を持ったGPIアンカー型タンパク質を細胞に発現させ、2量体形成の長さと頻度を調べた。また、もともと天然に存在している受容体だけではなく、GPI-アンカー部分(糖脂質部分)を貫通型タンパク質に変えることで液晶相に分配される構造に変えたキメラタンパク質についても調べた。その結果、GPI-アンカー型受容体はectodomain間相互作用が強いと2量体を形成しやすく、脂質相互作用の効果もタンパク質相互作用によりエンハンスされることが判明した。これは新しいラフトモデルとして注目を浴びると考えられる。 2. ラフト領域形成において「前駆ラフトから誘導ラフトが形成される機構の解明」を行うために、平成23年度にGPI-アンカー型受容体の会合体への他のラフトマーカーのリクルートを観察を行った。他のラフトマーカーとしてスフィンゴ糖脂質のGM3に蛍光ラベルしたものを調べた。結果、これらのラフトマーカーは100-200ミリ秒と短い時間ではあるが、一時的にGPI-アンカー型受容体の会合体ヘリクルートされていた。一方で、非ラフトマーカーの場合にはずっと短く低い頻度でしかリクルートは見られなかった。これらの結果から、GPI-アンカー型受容体は、刺激後に他のラフトマーカーを一時的にリクルートすることによりラフト様ドメインを形成していることが、初めて明らかになった。
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