ミオシンは分子モーターとしてアクチン繊維を駆動する。しかし、その力発生中のミオシンの構造解析が進んでいないために、分子メカニズムが解明されていない。一方で、電子顕微鏡法は、直接像をナノメータ以上の分解能で観察することができる強力な手法であり、トモグラフィー法等と組み合わせることで、三次元像を再構成することができる。そこで、本研究では、力発生中のミオシンの構造をクライオ電子顕微鏡観察できる技術の開発を行うことを目的とし、研究を進めている。クライオ状態のトモグラフィー法に関して、当該年度、当研究室として初めて観察を行った。これまで多くの報告がなされている細胞レベルに比べて、分子レベルの構造に対するトモグラフィーでは、そのアライメント技術に問題があり、画像の追跡及び、画像の高分解能化が困難であることが明確となった。また、このアラインメントの問題を解決するためには、高速の三次元再構成法と共に、精度が高く、CTFの補正が完全に実施される三次元再構成システムが必須であると考えるに至った。このことから、今年度は、そのトモグラフィー法の改良を中心に研究を進めた。画像のアライメントには、画像分割による方法が適していることが分かった。また、単粒子解析法を改良して、力発生時のミオシンの姿を捉えることを進めた。ミオシンがアクチンに1対多で結合している時の構造解析手法を作り上げ、実際に、アポ状態で結合しているときの構造を取得した。まだ、その構造は分解能が低く、かつ、信頼性が低いため、今後、さらに検討する。さらに、凍結装置の改良に関しては、本研究年度内では基礎研究に終わり、全体を完成させることができなかった。今後も継続的に実用化に向けて、研究を進める。
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