研究概要 |
高等動物の電位作動性カルシウムチャネルα1サブユニットの出芽酵母ホモログであるCCH1盟は、大腸菌に対して毒性を示すために通常の(市販の)ベクターにクローニングすることはできない。そこで、Cch1を培養細胞で発現させるために、目的蛋白質と形質転換マーカーであるEGFPとを独立に発現する市販のベクターpCMS-EGFP(Clontech.Co.)を改変し、大腸菌中でのコピー数が少ないpBCMS-EGFPを構築した。また、酵母細胞の高親和性カルシウム取込みにCch1とともに必須な因子であるMid1を、Cch1と同時に発現させた培養細胞を蛍光顕微鏡下で識別するために、pCMS-EGFPのEGFPを蛍光特性の異なるHcRedに置換えたpCMS-HcRedを構築した。これらの改変ベクターにCCH1遺伝子とMID1遺伝子のORFをそれぞれ組込み、BHK6細胞(Yaguchi,S.et al,J.Biol.Chem.275:41504-41511,2000)に発現させた。Cch1とMid1がBHK6細胞で実際に発現していることは、ウエスタンブロッティングで確認した。しかし、東邦大・医・薬理の赤羽悟美準教授と共同でパッチクランプ実験を行ったが、電位作動性のチャネル活性は検出できなかった。 そこで、上記のようなヘテロな発現系ではなく、酵母細胞を用いたパッチクランプ実験を行うことにした。まず、Cch1とMid1をTDH3プロモーターから高発現させるためのプラスミドをそれぞれ構築した。これらのプラスミドで形質転換したCch1/Mid1高発現酵母株は、野生株に比べ約5倍のCa^<2+>取込み能を示した。次年度に、この高発現株を用いて、酵母のパッチクランプ実験の第一人者である米国ウィスコンシン大学のChing Kubg教授と共同実験を行うことを合意している。 パッチクランプ実験に先立って、上記のCch1/Mid1高発現酵母株を利用して、5種類の高等動物の電位作動性カルシウムチャネルの各タイプに対する特異性が明らかにされている、既知のカルシウムチャネル阻害剤のCch1/Mid1チャネルに対する阻害効果を調べた。その結果、Cch1/Mid1チャネルは薬理学的には高等動物のLタイプチャネルに最も近いことが明らかになった。この結果は以下に記載した学術誌に掲載された。
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