研究課題
昨年度、出芽酵母の高親和性カルシムチャネルCch1/Mid1の活性を、Cch1とMid1を高発現させた酵母株のスフェロプラストを用いてパッチクランプ法で検出する実験を行ったが、チャネル電流は検出できなかった。ザイモリエース処理により調製したスフェロプラストをウエスタンブロットで解析したところ、Mid1の見かけの分子量が95Kから60K付近にシフトしていた。Mid1の活性にはN型糖鎖修飾が必要なので(未発表データ)、ザイモリエースに混入しているグリコシダーゼによってMid1の糖鎖が切断されて失活することがチャネル電流を検出できない原因であると考え、ザイモリエース処理条件を種々に変えてCch1/Mid1チャネル活性を保持したスフェロプラストを調製することを試みたが、良い条件を見いだすことはできなかった。そこで、本研究のもう一つの課題である、ポアサブユニットCch1の活性調節因子と予想されるMid1の構造と機能の解析を行い、以下の知見を得た。1、Mid1の全長に渡って分布している16カ所のN型糖鎖修飾コンセンサス配列(NXS/T)のほとんどは、酵母細胞で実際にN型糖鎖修飾されているので、Mid1タンパク質の大部分は細胞外またはER内腔にある。2、Mid1のC末端にヒスチジン生合性に必須なHIS4遺伝子産物をつないだ融合タンパク質は、his4破壊株を相補できない、すなわち、HIS4遺伝子産物を付けたMid1のC末端は細胞質内にないこと、および、Mid1のC末端に付けた、9カ所のN型糖鎖修飾配列を含むSUC2遺伝子産物は糖鎖修飾を受けている、すなわち、細胞外またはER内腔にあることから、Mid1のC末端は細胞外またはER内腔にある。3、Mid1のC末端側3分の1には、12カ所のシステイン残基を含む、frizzled類似モチーフとホモロジーのあるドメインがある。上記1~3のMid1の特徴は、高等動物の電位作動性カルシムチャネルの制御サブユニットα2βの特徴とよく似ていることから、両者はアミノ酸配列の相同性は低いが、機能的ホモログである可能性が高いことがわかった。
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Plant Physiol.
巻: 152 ページ: 1284-1296