遺伝情報はDNA⇔RNA→蛋白と伝わり、最終的には蛋白、あるいは機能性RNAとして生体反応を司っている。この過程で遺伝情報は正確に伝わる必があり、そこでエラーが生じると突然変異や異常蛋白の生成を引き起こす。これはヒトでは癌や異常蛋白の蓄積を伴う各種神経変性疾患、さらには老化の原因になっていると考えられている。本研究は正確な遺伝情報の伝達を保証する仕組みを明らかにしようとするもので、とりわけDNA以降、RNAから蛋白に遺伝情報が伝達される過程に注目して研究を進めた。 <酸化RNAに結合する蛋白を網羅的に検索する実験法を開発した> 酸化RNAと正常RNAをビーズに結合させた後、ヒト細胞の粗抽出液と2時間インキュベイトした。その後、十分量の塩溶液でRNAビーズを洗浄し、それぞれのビーズに結合したタンパク質をSDS溶液で遊離させた。全遊離タンパクを電気泳動し、酸化RNAに選択的に結合するタンパク質がないか比較検討した。 <結果> この方法を用いそれぞれ200個の蛋白を質量分析で同定し、そのうち酸化RNAに強固に結合する蛋白を4個を同定することが出来た。このうちの1つは、阻害実験により酸化RNAにより選択的に結合することが明らかとなった。さらに細胞を酸化ストレス下に晒すとこのタンパクの細胞内での量が急速に低下することが判った。さらにsiRNAを導入し遺伝子発現を低下させると、細胞増殖が抑制されることが判った。
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