Mcm10は複製因子の一つであり、OrcやMcm2-7複合体などの複製前複合体の構成因子と相互作用するだけではなく、複製の伸長反応に関わるDNAポリメラーゼαやPCNA、染色体のcohesionに関わるCtf4とも相互作用することが報告されている。しかしながら複製反応においてMcm10が具体的にどのような役割を担っているかは不明である。 Mcm10と他の複製因子との相互作用ドメインやその制御を試験管内で再構成して解析するために、ヒトMcm10やその欠失変異体をバキュロウイルスや大腸菌で発現し、精製する系を確立した。バキュロウイルスで発現させた完全長のMcm10はDNA結合活性を示した。また、高塩濃度(0.3M NaCl)ではモノマーとして存在していたが、生理的塩濃度(0.1M NaCl)では複合体を形成した。現在、この複合体が生理的に意義のあるものなのか、検討中である。 一方、ヒトMcm10の様々な欠失変異体を安定に発現する細胞株を確立し、細胞周期におけるタンパクレベルの変動を検討した。その結果、分子の中央付近の領域(438-473)がG1期におけるダウンレギュレーションに必要であることが明らかになった。今後、ダウンレギュレーションに必要な配列をさらに絞り込むと共に、この領域がAPCによる分解に関与しているかどうかを、試験管内再構成系で検証する予定である。 また、効率よくMcm10をノックダウンできるsiRNAの配列を複数同定し、これらの配列にサイレント変異を組み込んだMcm10を発現するHeLa細胞株を樹立した。siRNAにより内在性のMcm10をノックダウンしたときに、サイレント変異を組み込んだMcm10がその表現型をレスキューできることを確認した。さらに、サイレント変異を組み込んだ複数の欠失変異体を安定に発現するHeLa細胞株を新たに樹立した。
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