Mcm10は複製因子の一つであり、OrcやMcm2-7複合体などの複製前複合体の構成因子と相互作用するだけではなく、複製の伸長反応に関わるDNAポリメラーゼαやPCNA、染色体のcohesionに関わるCtf4とも相互作用することが報告されている。しかしながら複製反応においてMcm10が具体的にどのような役割を担っているかは不明である。これまでに874個のアミノ酸から構成されるヒトMcm10のさまざまな変異体を作成してHeLa細胞内で安定に発現させ、S期におけるクロマチンへの結合とfoci形成には、483-693の領域が関与していること、またこの領域を介してMcm2-7と相互作用していることを明らかにしてきた。 今年度は、siRNAのターゲット配列にサイレント変異を組み込んだ様々なMcm10の欠失変異体を発現するHeLa細胞株を樹立した。そして、siRNAにより内在性Mcm10をノックダウンしたときに、サイレント変異を組み込んだMcm10欠失変異体がその表現型をレスキューできるかどうか解析した。 種を越えて保存されている領域(200-493)を欠く変異体は、過剰発現しても内在性Mcm10の機能を相補できなかった。一方、Mcm2-7複合体との相互作用ドメインを欠く変異体は過剰発現により内在性Mcm10の機能を相補できたが、その活性は全長のMcm10よりも弱かった。従って、Mcm2-7複合体との相互作用ドメインは、Mcm10の複製フォークへの安定な結合に必要であるが、Mcm10の複製における本質的な役割には不要であり、このドメインの機能は過剰発現により相補できることが示唆された。
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