研究概要 |
線虫C.elegansの卵黄成分はヒト低密度リポタンパク質(LDL)と似た性質をしており,卵母細胞によって細胞外から取り込まれ,栄養素として蓄えられる.この際,卵黄成分は卵母細胞膜にある卵黄受容体に捕捉され細胞内に取り込まれるが,細胞は卵黄受容体を再び細胞膜へ戻して何度も再利用している.そこで本年度は,線虫の卵黄タンパク質であるYP170に緑色蛍光タンパク質(GFP)を結合したYP170-GFPの卵母細胞による取り込みに異常を示すrme-4およびrme-5変異株の解析を行った.まず卵黄受容体の卵母綱胞における局在性について解析を行ったところ,RME-4とRME-5はエンドソームから細.胞膜へのリサイクリングステップに働いていることが示唆された.次にrme-5変異の原因遺伝子を同定したところ,低分子量GTPase RabファミリーのーつであるRAB-35をコードしていることが明らかとなった.このRAB-35はエンドサイトーシス経路に広範に存在し,その中でも特に初期エンドソームに局在化していることが明らかとなった.一方,rme-4変異の原因遺伝子を同定したところ,DENNドメイン,クラスリン結合ボックス,AP-2結合モチーフをもった新規タンパク質をコードしていることが明らかとなった.解析の結果,RME-4はRAB-35のGDP型またはヌクレオチドフリー型に特異的に結合し,RAB-35の初期エンドソーム膜への局在化を制御する因子であることが明らかとなった.また,RME-4はAP-2のサブユニットであるα-アダプチンとも相互作用し,卵母細胞の細胞膜上においてクラスリン被覆ピットに局在することが明らかとなった.以上の結果から,RME-4はクラスリン被覆ピットに局在し,クラスリン小胞の形成と同時にRAB-35を小胞膜上にリクルートすることによって卵黄受容体の初期エンドソームから細胞膜への素早いリサイクリングを可能にしていることが明らかとなった.
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