研究概要 |
申請者らはC.elegansの低分子量GTPase RAB35が卵黄受容体のエンドソームと細胞膜間のリサイクリングに働くことを明らかにしている.今年度はこのRAB35が作用するエフェクター分子を探索するために,酵母ツーハイブリッド法によりGTP固定型優性変異を導入したRAB35と相互作用する新規因子のスクリーニングを行った.その結果,複数のRAB35エフェクター候補因子を単離した.これらのうちアクチン重合調節因子の一つとして知られる線虫ホモログは,野生型RAB35とGTP固定型変異RAB35とは相互作用するが,GDP固定型変異RAB-35とは結合しないことが明らかとなった.そこで,卵黄成分と緑色蛍光タンパク質の融合タンパク質を発現する線虫株においてこの遺伝子に対するRNAiノックダウンを行ったところ,卵母細胞による卵黄の取り込みに異常が観察された.また,これらの線虫株は生育が悪く一部胚性致死になることが明らかとなった.さらに,この遺伝子破壊株においても卵母細胞による卵黄の取り込みに異常が観察された.これらのことから,RAB35が活性化するとアクチン重合調節因子を介して,卵黄受容体の細胞膜へのリサイクリングに働くことが示唆された.現在,RAB35とアクチン重合調節因子の相互作用についてさらに生化学的に解析を進めている.一方,RAB35とアクチン重合調節因子のマウスホモログも獲得し,これらの遺伝子産物の培養細胞内における細胞内局在性等について解析を進めている.興味深いことに,動物培養細胞においてRAB35の野生型遺伝子を過剰発現させると細胞突起形成が促進され,遺伝子ノックダウンを行うと細胞の形態が異常になることが明らかとなってきた.これらのことから,RAB35は受容体の細胞膜へのリサイクリングだけでなくアクチンを介して細胞形態形成にも関与することが示唆された.
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