疾患ならびに初期発生に関与するWNKキナーゼは、プロテインキナーゼSPAK/OSR1の進化的に保存されたセリン残基をリン酸化する。また、WNK欠損細胞を用いた実験からSPAK/OSR1の活性化にWNKが重要であることが明らかになっている。しかし、WNKによるリン酸化部位であるSPAK/OSR1のセリン残基を置換した変異体は細胞内において野生型と同程度の活性を保持しており、線虫のSPAK/OSR1ホモログ(GCK-3)変異体の表現型も回復できる。したがって、WNKによるSPAK/OSR1の活性制御はセリン残基のリン酸化以外による可能性が考えられた。SPAK/OSR1の制御機構を明らかにする目的で、HEK293細胞にflag-tag付きSPAKを発現させflag抗体免疫沈降物中に含まれる因子を同定するという手法によりSPAK結合因子を探索した結果、プロテインキナーゼであるカゼインキナーゼ(CK2alpha)が結合候補分子として得られた。HEK293細胞での過剰発現の実験から、SPAK/OSR1とCK2alphaは細胞内で結合がみられること、さらにCK2alphaはSPAK/OSR1のC末領域を基質とし、それはラットSPAKの394番目のセリン残基であることを明らかにした。また、CK2alphaによるリン酸化は線虫GCK-3でも認められることから、このメカニズムは種を超えて保存されている可能性が示唆された。
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