平成20年度の本研究では動物の卵減数分裂過程における極端な不等分裂が起こるしくみを明らかにするために、その重要な必要条件である紡錘体を細胞表層へ局在し固定化されること(以後アンカーと呼ぶ)する分子機構の解明を目指している。この紡錘体のアンカーにMos-MAPK(mitogen-activated protein kinase)キナーゼのカスケードが必要である。このカスケードはMos、 MEK(MAPK/Erk kinase kinase)、 MAPKのキナーゼを含み、MAPKの下流にはRsk(Ribosomal S6kinase)やMnk(MAP kinase interacting kinase)などのキナーゼが存在する.したがって、紡錘体のアンカーに関わるタンパク質はこれらのキナーゼのどれかに依存してリン酸化されると予測される。そこで、本年度はどのキナーゼが紡錘体のアンカーに関わっているのかを明らかにすることを目標として研究を行った.その主要な実験としては卵母細胞の内在性のMosをアンチセンスオリゴヌクレオチドで発現を抑制し、その上で恒常活性型のRskを卵内に導入することで、 Mos、 MEK、 MAPKの活性が無くてもRsk単独で紡錘体のアンカーが正常に起こることを明らかとした. この結果をもとに、今後はRskの基質となるタンパク質で、紡錘体のアンカーに関わる分子を探索して行く方針である.
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