細胞内で生合成される蛋白質は、アミノ酸の鎖であるポリペプチドとして翻訳されるが、正しい立体構造を獲得しなければ、その機能を発揮できない。このため、分子シャペロンと呼ばれるタンパク質群が、ポリペプチド鎖の正しい折り畳みを促し、タンパク質分子構造の形成を介助する。真核細胞のシャペロニンは、このようなシャペロン機能を担う重要なタンパク質あるであるが、その詳細な作用機構は明らかになっていない。このため、シャペロニンの細胞内機能の詳細を明らかにすることを研究の目的とした。まず、細胞質シャペロニンCCTとペプチド基質との相互作用を無細胞翻訳系とフォトクロスリンカーを使って解析した。その結果、ペプチド基質においてフォトクロスリンカーを入れる位置によらずクロスリンクされるサブユニットと、フォトクロスリンカーを入れる位置によってグロスリンクの有無が変化するサブユニットが見られた。このことは、サブユニット間で、基質のフォールディングのための役割分担がされている可能性を示唆している。さらに、本年度から、もう一つの真核細胞シャペロニンであるミトコンドリアHSP60について、CCTとの比較のため、作用機序の解析を行うこととした。まず、HSP60とそのコシャペロンHSP10を大腸菌リコンビナントの系により精製し、インビトロでの基質フォールディングの系を構築した。その結果、HSP60-HSP10によるフォールディングは、大腸菌のホモローグであるGroEL-GroESによるそれとはかなり異なっていることが示唆された。また、HSP60は少なくともインビトロの系において、シングルリングになりやすく、ダブルリングになりやすいGroELとは、性質が異なっていることもわかった。さらに詳細な解析を進めたい。
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