本研究では核膜孔構成因子(ヌクレオポリン)の一つであるNup98の機能異常による細胞がん化のメカニズムを明らかにすることを目的としている。Nup98は数多くのパートナーと融合遺伝子を形成し、それらが細胞がん化の原因となる事が知られている。これまでにNup98のN末端FGリピート領域が核外輸送因子Crm1と相互作用を示すことを明らかにしている。本年度は抗Nup98抗体を用いて生細胞におけるNup98の機能解析を進めた。抗Nup98抗体の核へのマイクロインジェクションを行った結果、マーカータンパク質であるGST-GFP-NESの核外輸送が顕著に阻害されることが分かった。更に、細胞質へ抗Nup98抗体をマイクロインジェクションした場合にも同様に核外輸送の阻害活性が見られた。また、その際に細胞質に注入した抗Nup98抗体が核へと移行していることが分かった。これらのことからNup98は核一細胞質問をシャトリングしながらCrm1依存的な核外輸送に関っていることが示唆された。また、Crm1依存的な核外輸送においてコファクターとして機能するRanBP3がNup98-Crm1-NESの相互作用に濃度依存的な影響を示す事が明らかとなった。核一細胞質問をシャトリングする因子の中には細胞がん化との関連性が報告されているものが存在する。今後は、これらの因子の局在制御と細胞がん化の関連性を更に明らかにしてゆく予定である。
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