1) MICS1遺伝子の機能解析 MICS1はミトコンドリア内膜タンパク質で、アポトーシス刺激によるシトクロムCの遊離を負に制御し、アポトシース初発の閾値を上げている。それとは独立に、MICS1はクリステ構造維持に働いている事が、MICS1をノックダウンしたHeLa細胞でのクリステ構造の減少より明らかとなった。そこで、MICS1過剰発現ではクリステ構造の増加が期待できたので、MICS1を一過的に過剰発現したHeLa細胞を免疫電子顕微鏡解析した。期待とは異なり、MICS1を過剰発現したミトコンドドリアのクリステは顕著に減少していた事から、MICS1は量的にクリステ膜の数を制御していないことが明らかとなった。 2) ミトコンドリア形態形成に関わる分子モータータンパク質の機能解析 私達は線虫KLP-6を新たなミトコンドリア形態制御因子として同定した。KLP-6はキネシン分子属し、哺乳類ではまだ相同分子が同定されていなかったため、ラット脳と肝臓のcDNAよりラットKLP-6をクローニングした。モータードメインを欠失したタンパク質をHeLa細胞に発現させるとミトコンドリア形態に異常を示し、線虫と同様の表現形が得られた。同じ欠損体を神経芽腫細胞に発現させると、神経軸索でのミトコンドリア輸送に顕著な遅延が観察された。以上の結果より、KLP-6は哺乳類においてもミトコンドリア移動に関与していることが明らかとなった。
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