ER exit siteは、小胞体からのタンパク質輸送を媒介するCOPII小胞が形成される小胞体膜上の領域であり、他の小胞体膜とは性質が大きく異なっている。ER exit siteの構築機構や生理的意義に関しては未だ不明な点が多い。研究代表者はこれまでの研究でER exit siteの構築に関与する2つの因子、p125とSec16p、を同定した。本研究ではp125とSec16p、またSec16pのホモログであるKIAA1928pに関して解析を行い、20年度は以下の結果を得た。 1p125の解析 p125は酵母には存在しない動物特有のタンパク質である。個体レベルでのp125の機能解明を目指し、p125ノックアウトマウスを作製した。p125欠損マウスは外見上変化がないが、雄マウスに関して生殖能力の低下が認められた。一方、雌マウスではそのようなことは見られず、精子形成過程に欠陥があることが予想された。p125欠損マウスから作製したMEFを用いてVSVGタンパク質とコラーゲンの分泌を調べたところ、VSVGタンパク質に関しては野生型との違いが見られなかったが、コラーゲンの輸送に若干の遅れが見られた。p125欠損マウスではコラーゲンなど巨大分子の輸送が遅れている可能性が考えられた。 2Sec16pとKIAA1928pの解析 KIAA1928pの各種欠失変異体を作製しCOPII小胞のコートタンパク質と結合する部位を解析した。その結果、Sec16pと特に高い相同性を持つ中央領域でコートタンパク質と結合することがわかった。RNAi法を用いてKIAA1928pを細胞で発現抑制すると、ミトコンドリアとペルオキシソームの形態に影響がでることがわかった。両オルガネラの変化はSec16pを発現抑制したときには見られず、KIAA1928pはSec16pとは異なる機能を有する可能性が考えられた。
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