研究概要 |
細胞質に存在するRNA粒子は,mRNAの輸送と局在化に中心的な役割を果たすとともに、細胞外からの刺激に応じた翻訳のON/OFFの調節に働いている。本研究では、RNA粒子に局在するRNA結合タンパク質RNG105のターゲットmRNAを同定し、それらmRNAの細胞内動態および翻訳調節機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、平成21年度以降に計画していた、神経細胞におけるmRNAの動態と翻訳調節についての解析を以下のようにおこなった。神経細胞においてRNG105のターゲットmRNAの一部として同定していたNa^+/K^+ATPaseサブユニットアイソフォーム4個(alpha3, FXYD1, FXYD6, FXYD7)の3'非翻訳領域(3'UTR)をGFPの翻訳領域にcisにつなげ、神経培養細胞に導入した。これらmRNAはRNA粒子に取り込まれ、神経樹状突起へ輸送・局在化することが分かった。GFPの蛍光強度を測定することによってその翻訳量を調べると、これら3'UTRをつなげたGFPの翻訳は、コントロール3'UTRをつなげたものに比べて、神経細胞において著しく低下することが分かった。このことは、RNA granuleに取り込まれたmRNAは、輸送中にその翻訳がOFFに調節されていることと良く一致した。RNG105ノックアウトマウスの神経細胞においても同様の実験をおこなったところ、mRNAの樹状突起への輸送は低下したが、細胞体におけるGFPの翻訳量はコントロールの神経細胞と差がなかった。以上の結果から、RNG105はこれらmRNAの樹状突起への輸送に関与するが、翻訳調節に関しては別の因子が存在することが示唆された。
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