研究概要 |
今年度の最も重要な成果は、研究実施計画-3における、神経膠種細胞浸潤のArf6依存性の検討結果である。乳癌モデルにおいて示してきたがん細胞浸潤におけるArf6シグナルの重要性が、神経膠種浸潤においてどのように意義づけられるのかについて、重要な示唆が得られた。 1高浸潤性を示す神経膠腫細胞において高Arf6発現を示すものが見いだされたと同時に、低浸潤性かつ低Arf6発現を示すものが見いだされた。` 2低Arf6発現でありながら高浸潤性を示すものが見いだされた。 3Arf6シグナルの下流因子であるAMAP1の発現を調べたところ、高浸潤性・高Arf6発現を示すものにおいてのみ、高発現がみられた。 4上記のArf6蛋白質発現のバラエティが観察される一方で、これらの神経膠種細胞におけるArf6mRNA量はほぼ同等であり、Arf6発現の調節点は「転写後」の過程にあると考えられた。 これらのことは、神経膠種細胞においてもArf6シグナル依存的に高浸潤性を示すものが確かに存在ずることを強く示唆した(1,3,4)一方、重要なことに、Arf6シグナル非依存的高浸潤性の存在を示している(2)。このことはモデル系である乳癌細胞においては観察されなかったことであり、神経膠腫の病態としての複雑さを反映しているという点で興味深い一方、治療に向けてその浸潤性の制御を考えるとき、Arf6シグナル系のみでは標的として不十分であることを示している。今後、本研究課題であるArf6活性の微細制御と並行した、Arf6非依存的細胞浸潤機構解析の必要性が示されたことからその立案を行い、他研究助成への申請に至った。
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