本研究では、ヒト前立腺と同様な役割を果たす器官と考えられている、ショウジョウバエ附属腺(accessory gland)における、特異な二核細胞集団の発生機構解明に焦点をあてる。 研究代表者らは、ショウジョウバエ附属腺の二核細胞集団が、少数の二核細胞からの増殖により生まれるのではなく、最終細胞周期の細胞質分裂の放棄によって、一斉に起きることを明らかにした。本研究では、この二核化がどのような因子の働きによって生じてくるのか、及び二核細胞集団の存在意義が何であるのかを明らかにすることを目的としている。 本年度は以下のような実験を計画し、行った。 1.附属腺の発生には、初めにFGFシグナルによる中胚葉細胞のリクルート、続いて転写因子Pairedの関与が知られている。二核化の起きる発生ステージを明かにすると共に、これらの因子が如何に関与するのかを探究した。その結果、二核化の起きる発生ステージは蛹中期の一時期であり、転写因子Pairedの関与は細胞種特異的であることが明かとなった。 2.附属腺の二核細胞集団の中には、細胞が委縮して貪食されるような、特殊な姿を見せる像が存在することがある。研究代表者らはこれをアポトーシスに代わる細胞の消化と予想しているが、通常のアポトーシスの際にも良く見られる、細胞層からの離脱も伴うことが明らかとなった。また、各種のファゴソーム/リソゾーム・マーカーは検出されにかったが、これは固定後の細胞の性質によるものかも知れず、今後の検討を要する。 3.すでに同定済みの細胞種特異的な二核形成不全を見せるトランスポゾン・タギング変異体の遺伝子座マッピングを進めた。
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