Blimp-1は転写抑制因子として作用してftz-f1遺伝子の発現のタイミングを制御することによって蛹化を誘導するエクダイソンパルスを誘導すると考えられる。本年度はまず、このパスウェイでのBlimp-1の発現のタイミングと蛹化のタイミングの関係を検討した。Blimp-1のタンパクの分解促進領域を一部欠失しているためタンパクの安定性が増大したBlimp-1を熱ショックプロモーター依存的に発現させると、全長のBlimp-1を同様に発現させた場合に比べて、ftz-f1の発現および蛹化のタイミングの遅延がより顕著になった。次に発現量を変えるため安定化したBlimp-1を熱ショックプロモーター下に発現できるhs-Blimp-1遺伝子を1コピー持つ場合と2コピー持つ場合で、同じ熱ショックによる影響の違いを調べたところ、コピー数の増加に応じて蛹化のタイミングが遅くなった。以上のことからBlimp-1は、発現量および安定性か蛹化のタイミングの決定に重要であり、蛹化のタイミングを決定するタイマー因子であることが判明した。 この蛹化のタイミングに関与する時間決定タイマーがショウジョウバエのどの組織で働いているか調べるために、GAL4とGAL80を用いたシステムで前蛹期に時期特異的に特定の組織で、Blimp-1あるいはFTZ-F1の強制発現あるいは、RNAi法による発現抑制をおこなった。前胸腺、アラタ体、脂肪体での強制発現あるいは発現抑制によっても蛹化のタイミングへの影響はほとんど見られず、これらの器官は蛹化の決定に中心的役割を果たしていない可能性が高まった。
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