研究概要 |
内胚葉性器官の明確な境界がいつ,どのような機構でできるかについて,食道・胃域内胚葉マーカーである転写因子Sox2と腸域内胚葉マーカーである転写因子CdxAを用いて研究を行った。Sox2とCdxAの体節期での発現パターンを調べたところ,2つは初め重ならずに発現するが,Sox2の発現域が後に広がってCdxAと一部重なり,その後明確な境界を形成した.また,Sox2をCdxA発現域に発現させたところ,CdxAの発現が抑えられるうえに,CdxAをSox2発現域に強制発現すると,Sox2の発現が抑えられたことから,Sox2とCdxAの発現の相互抑制が境界形成に関わることが示唆された. 前腸腹側内胚葉の前方のみで発現するBMP阻害因子Sizzledは,前腸全体で強制発現させると肝臓マーカー遺伝子の発現を抑えることが明らかだった.本年度はsizzledのloss-of-functionを知るために,siRNAを使ってsizzledのノックダウン(KD)を行った.sizzled KD前腸では,肝臓マーカーの発現が前腸最後方から心臓の前端レベルまで広がっていた.この結果から,前腸におけるsizzledは肝臓領域を前腸最後端に限定する機能を持つことが明らかになった. 肝臓誘導因子として単離されたアポリポタンパク質APOA1の詳細な解析を行った.APOA1を様々な位置の内胚葉に強制発現させたところ,肝臓マーカーは前腸内胚葉,および後腸前方内胚葉では誘導されたが,後腸後方では誘導されなかった.また,アフリカツメガエルのAPOA1は非常に拡散性が高いこと,胚内で2段階の修飾を受けていること,wntシグナルとは関連性が弱いことが明らかになった.またアフリカツメガエルのAPOA1は卵黄の多い内胚葉全体と前腎に特異的に発現していることが分かった.
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