研究概要 |
成体の消化管では,各消化器官の境界が厳密に決まっている,特に食道/胃,胃/十二指腸では境界を境に上皮がそれぞれの特徴をもって並んでいる.領域形成の研究に比べ,この境界の形成に関する研究は少なく.その分子機構は殆ど分かっていない.胃/十二指腸の境界では,発生の比較的早い時期(10日胚)に胃上皮マーカーである転写因子Sox2と腸上皮マーカーである転写因子CdxAの発現境界と,胃/十二指腸の境界が一致することが知られていた.そこで特に胃/十二指腸境界の形成機構に関し,次の3項目を研究した 1.Sox2とCdxA詳細な発現解析 Sox2とCdxAは発現開始時には,離れて発現している.しかし,ステージ16付近から両者の発現が重なることを見いだした.またこのSox2/CdxA発現域の脇にはSox2またはCdxAのみを発現するがその発現が弱い領域があることもわかった 2.Sox2/CdxAの境界付近での細胞動態の観察 境界付近の領域をSox2のみ発現する領域,Sox2/CdxA共発現域,CdxAのみ発現する領域に分け,GFPコンストラクトを導入してラベルし,1日後,2日後の細胞の動きおよび細胞の発現する転写因子を調べた.するとSox2発現領域は伸長するが,境界を越えて後方に移動することはないこと.Sox2/CdxA共発現領域の細胞は,その一部が後方へと伸長しながら移動し,CdxAのみは発現する細胞に変化すること.CdxA発現細胞は後方へ移動するが,伸長しないことが分かった.このことから,Sox2/CdxA共発現領域はこの時期に起こる中腸領域の後方伸長の起点となっている可能性が示唆される 3.Sox2とCdxAの相互作用の解析 SOx2,CdxAの強制発現実験により,Sox2とCdxAは相互抑制作用があることがわかった.この作用によって一度できた境界が維持されると考えられる
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