(1)RNA干渉法によるミジンコvgおよびsdを始めとした背甲形成関連遺伝子群の機能解析 ショウジョウバエ翅においては、SDおよびVG発現の開始と維持はWGの制御下にあることが知られているが、ミジンコにおいても同様の機構が存在しているかどうかは非常に興味深い問題である。そこで、ミジンコwg RNAi胚におけるSDおよびVGの発現を2重免疫染色法により解析した。その結果、強い表現形を示すwg RNAi胚においてもSDおよびVGの背甲の縁における発現は正常であり、ミジンコのVGおよびSDの発現の開始と維持は、ショウジョウバエと異なり、wgの制御下にないことを明らかにした。この結果は、ショウジョウバエの翅形成とミジンコの背形成には同じ遺伝子モジュールが使用されているが、両器官には進化的な相同性がないという事を強く示唆している。 (2)ミジンコ形質転換法の開発と背甲形成関連遺伝子群の過剰発現 昨年度中に作製したPiggyBacトランスポゾンを用いた形質転換ベクターをミジンコ胚にマイクロインジェクションし、ミジンコの形質転換法の確立を試みたが、残念ながら現在までに目的の形質転換体は得られていない。 (3)ブラインシュリンプからのvgおよびsdのクローン化とその発現部位の同定 ミジンコと同じ鰓脚亜綱に属するブラインシュリンプは背甲を持たないため"無甲目"に分類されているが、同目は進化の過程で背甲を失った可能性がある。そこでブラインシュリンプからsd遺伝子を単離し、ミジンコと同様にin situ hybridizationでそのmRNAの発現領域を解析したところ、胸部付属肢の腹側などで特異的な発現が観察されたが、背側体躯部における発現は全く見られなかった。また同タンパク質の発現を解析するために特異抗体を作製した。
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