研究概要 |
動物進化の過程ではボディープランがほとんど変化しないまま、そのボディープランを作るための遺伝的仕組みが大きく変化することがある。私は節足動物門の体節形成がそのような形態に表れない遺伝的な変化を理解するためのよいモデルになると考え、鋏角類のオオヒメグモを用いて、後方部分の体節形成に重要な尾部領域(尾葉と呼ぶ)の形成に関わる遺伝子の網羅的探索を行った。その結果、ptc, dpp RNAi胚を用いたマイクロアレイ解析で候補に挙がっていたESTクローンAt-eW-020-B15に対してRNA干渉による遺伝機能の抑制を行ったところ、尾葉の形成に顕著な異常が観察された。この異常が特異的なものかどうかを判定するために、複数の重複しない二本鎖RNAを使用してRNA干渉を行ったところ、同様の異常が見られたことから特異性が確認できた。さらに、発現解析により、At-eW-020-B15の初期胚における発現パターンはヘッジホッグ(Hh)シグナルに大きく依存することが明らかになった。また、ptc, dpp RNAi胚で行ったマイクロアレイ解析と同じようなマイクロアレイ解析をhh RNAi胚で行い、Hhシグナルによって発現が制御される遺伝子を多数同定した。これらの候補遺伝子についても、RNA干渉による表現型スクリーニングを始めている。今後、遺伝子機能の詳細な解析を行うことにより、オオヒメグモにおける尾葉形成及び体節形成の仕組みを明らかにしたい。
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