研究概要 |
本研究でマイクロRNA遺伝子族の解析のコアデータと位置付けているヒトとマウスにおいて、マイクロRNAプレカーサー配列とその相同領域をヒト、マウスのゲノム中にマップした。さらに、このコアデータを用いてラット、チンパンジーにその対象を広げ、それぞれのゲノムへのマッピングを行った。そして、その領域での発現の有無を調べるために、各種発現配列タグの割り当てを継続している。次に、当初の計画に従って、Kerteszらの予測アルゴリズム(Nat genet2007,39:1278-84)を用い、ヒトとマウス各々約20000遺伝子の3'UTR配列中にマイクロRNAターゲット配列を予測した。この結果データからマイクロRNAのターゲットとなる遺伝子の機能についてGene Ontologyに基づいて網羅的な解析を行ったところ、転写制御の機能に関わる遺伝子が極めて高い有意性をもって、マイクロRNA遺伝子族のターゲットとなっていることが確認された。そこで、転写因子とマイクロRNAによるフィードフォーワード制御回路を網羅的に推定し、それらの回路をrandomizeしたシミュレーション結果と比較することにより、マウス-ヒトの進化の過程で、マイクロRNA遺伝子族に共通すると考えられる遺伝子制御網での役割を推定した。その結果から、遺伝子制御の回路網において、マイクロRNA遺伝子族は、新たに制御の対象とする遺伝子の数を増やす役割より、既に存在している制御回路を補強する点にその役割の特質があることが示唆された。続いて種特異的マイクロRNAターゲットと保存されたターゲットの役割の比較の作業を開始している。
|