研究概要 |
昨年度までに同定された、5,169オルソログ遺伝子の保存されたマイクロRNAターゲット配列からマイクロRNAによる遺伝子制御の非冗長な関係を示す1または0で表された行列を作成した。同様に網羅的に予測した転写因子結合配列を用いて、転写因子による制御の関係を示す行列を別個に得た。この2つの行列から、マイクロRNAと転写因子が協調的に制御を行うフィードフォワード回路を同定した。この協調的制御に関して、2つの行列を別個にランダム化し、実際の制御回路を示す行列との比較により、マイクロRNAと転写因子の遺伝子制御網構築の進化的変遷の相違を明らかにすることを目指した。その結果、進化の過程で、マイクロRNA遺伝子族はターゲット遺伝子族を極めて有意(P〓1.8^<-270>)に減少させ、制御の冗長性を極めて有意に(P〓2.6^<-270>)増加させることを明らかにし、昨年度得られた示唆を明確化した。更に、マイクロRNA遺伝子群がターゲット遺伝子を制御する回路と転写因子を制御する回路とに分けて別個の行列として扱うことにより、制御網の冗長性の増加は極めて有意に(P〓2.4^<1729>)マイクロRNA遺伝子族の進化過程で形成されたことを明らかにした。マイクロRNA遺伝子族の顕著な変化に対し、転写因子の制御網の変化は極めて少なく安定していた。以上より、マイクロRNA遺伝子族による協調的制御網は、転写因子による安定した制御網に適合するような進化的変遷を経ていることを明らかにした。更に、マイクロRNAは負の遺伝子制御を行うことから、負の自己抑制を含む遺伝子制御網に着目し、負の自己抑制制御が多細胞化、特に神経系の発達に特異的に関与する可能性を示す知見を得た。研究過程で新たに開発した、プログラム「ReAlignerVR」をGNU General Public LicenseとしてWeb Pageから公開している。
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