研究概要 |
本研究は,第1の目的として,集団形成後30余年の歴史をもつ当研究所のマカクザル(ニホンザルとアカゲザル)繁殖コロニーにおいて,遺伝的多様性および集団の近交係数の経時的変化を明らかにし,飼育記録から推測される近親交配の影響との関連を調査し,第2の目的として,閉鎖集団に近い環境に生息する宮崎県幸島の野生ニホンザル集団について同様の調査を行い,ニホンザルにおいて初めて遺伝的多様性と適応度との関係を明らかにすることを計画している. 平成21年度は,当研究所のマカクザルコロニーにおいて,過去に群れの構成員であった個体のマイクロサテライト遺伝子型判定をすすめた.これまで分析した15遺伝子座に加えて,Kanthaswamy et al. (2006)が提唱したマイクロサテライトの標準マーカーセットの分析も行った.また,当研究所のアカゲザルコロニーの遺伝的特徴を明らかにするため,標準マーカーセットから定量される遺伝的多様性を,合衆国のアカゲザルコロニーのものと比較した.その結果,当研究所のインド群および中国群の遺伝的多様性は,平均ヘテロ接合率の期待値でそれぞれ約60%および70%であったが,合衆国の7カ所のアカゲザルコロニーの多様性(70%~77%)よりも低いことが明らかになった.さらに,mtDNAの塩基配列分析を行ったところ,当研究所のアカゲザルインド群および中国群の基礎となった個体群は,それぞれの国内の様々な地域に由来する個体によって構成されていたことが明らかになった.
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