研究概要 |
高齢者の転倒を防止するためには,下肢の運動機能や姿勢調節能力の維持・向上を図ることが重要である.近年,足趾・足底訓練による足趾把握筋力の強化により下肢運動機能や姿勢調節能力の改善と転倒予防の関連を示唆する報告がなされている.しかし足趾把握筋力を測定するための既存の測定器はなく,新たに開発する必要性があった.そこで所定の場所に足趾を押し当てることにより足趾底屈力を測定できるような構造の測定器を新たに開発し,試作品として使用してきた.この足趾把握筋力測定器を用いて多くの被験者を対象にして測定を行い,転倒経験の有無との関連を分析し,転倒のしやすさと足趾把握筋力の関係を明らかにしてゆくことによって転倒の危険度を予測することが本研究のねらいである. そこで本年度は多数の測定を行うために,新たに5台の足趾把握筋力測定器を製作した.なお,製作に当たっては機器の精度の向上をはかるために機器にいくつかの改良を加えた.改良は最大測定荷重の増加と測定誤差の減少を目的として行った.その結果,最大測定可能荷重は試作測定器の約2倍である500Nに増加した.これまで測定を行ってきた中で最大の測定値は230Nであったので,充分に測定範囲をカバーできるようになったと考えられた.また測定誤差は最大で0.3%と,試作測定器の約10分の1に減少した.これらの結果から,新たに作成した足趾把握筋力測定器は今後のデータ収集に充分に耐えうるものであると判断された.
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