研究概要 |
高齢者の転倒を防止するためには,下肢の運動機能や姿勢調節能力の維持・向上を図ることが重要である.特に下肢の筋力の低下は転倒の大きな要因であることがわかってきた.しかし足趾把握筋力を測定するための既存の測定器はないため,測定器を新たに開発してきた.この足趾把握筋力測定器を用いて多くの被験者を対象にして測定を行い,転倒経験の有無との関連を分析し,転倒のしやすさと足趾把握筋力の関係を明らかにしてゆくことによって転倒の危険度を予測することが本研究のねらいである. 本年度は,開発した足趾把握筋力測定器と,これまでに得られたデータについて整理を行い,国際人間工学会連合総会(IEA2009)にて学会発表を行った. さらに本年度は前年度に作成した5台の足趾把握筋力測定器を用い,約300名の健康な成人男女を対象に測定を行った.その結果,男女別年代別の測定値の分布が明らかになった.また,足趾把握という動作が日常あまり行われていないため,測定時前に足趾把握動作の練習を行う必要のある被験者がかなりいることがわかった. また,これとは別に,重心移動能力と足趾把握筋力の関係を明らかにするために,40名の成人を対象に測定を行った.その結果,足趾把握筋力と重心の移動範囲には相関がみられた.このことから,足趾把握筋力は,立位時の重心の移動範囲を大きくできることが推察され,外乱等による重心の移動が原因である転倒の防止に関連があると推察された.
|