研究概要 |
高齢者の転倒を防止するためには,下肢の運動機能や姿勢調節能力の維持・向上を図ることが重要である.特に下肢の筋力の低下は転倒の大きな要因であることがわかってきた.しかし足趾把握筋力を測定するための既存の測定器はないため,測定器を新たに開発してきた.この足趾把握筋力測定器を用いて多くの被験者を対象にして測定を行い,転倒経験の有無との関連を分析し,転倒のしやすさと足趾把握筋力の関係を明らかにしてゆくことによって転倒の危険度を予測することが本研究のねらいである. 本年度は,前年度に測定した約300名の測定データの詳細な分析を行ったところ,女性において,日常の運動習慣の有無と足握力の間に有意な関連があることが明らかとなった.これらの結果を,日本人間工学会第51回大会にて発表した.また,転倒に関連していると考えられるバランス能力と足趾把握筋力の関係を明らかにするために,昨年度に40名の成人を対象に重心移動能力と足趾把握筋力の測定を行ったが,これらのデータを分析した結果,足趾把握筋力と重心移動範囲に相関がみられ,外乱等による重心の移動が原因である転倒の防止に効果があると推察された.これらの結果を,第52回日本理学療法学術大会ならびに,日本人間工学会第51回大会で発表した.また,足趾把握筋力の訓練装置については既存の訓練方法における足指の動きについて高速撮影によって記録を行ったが,詳細な分析は今後の課題である.
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