研究概要 |
真核生物の染色体末端に存在するテロメアは、高度な繰り返し配列からなるテロメアDNAとその結合タンパク質から構成され、テロメア配列の長さは種や細胞ごとにある一定の範囲内に保たれている。出芽酵母では、テロメア長が約350bpに保たれており、この長さ制御に関わっているのが、Rap1、Rif1、Rif2タンパク質である。本研究では、テロメア長調節に関わるテロメアDNAとテロメア結合タンパク質Rap1複合体の構造解析を電子顕微鏡法により進めている。本年度は、前年度に引き続きRap1精製法の改良と電子線トモグラフィー法を行うためのソフトウエアの導入、氷包埋試料調製、クライオ電子顕微鏡操作等、電子顕微鏡法を行うためのセットアップを進めた。 精製したRap1タンパク質を電子顕微鏡観察すると長さの異なるフィラメント状の複合体が存在していた(前年度報告)。このフィラメント状の複合体は、Rap1のみから形成されるフィラメントなのかあるいは、超微量タンパク質の共雑なのかを明らかにするためにRap1フィラメントの形成能について検討した。これまでの精製法では、すでに溶液中にフィラメント状の構造体が含まれていたが、精製初期段階において超遠心(30,000xg, 60分)を行うことにより、フィラメント状の構造体を除くことができた。単分散したRap1を確認後、様々な条件下でフィラメント形成実験を行ったところ、37℃に放置するとフィラメント状の構造体を形成することがわかった。しかし、このフィラメントが生理的に機能する構造体であるのか熱によるタンパク質変性状態(アミロイド状繊維)なのかはわかっていない。アミロイド線維はクロスβ構造に富み、X線回折において特徴的な4.7Åの層線を示すので、X線繊維回折法を使ってRap1フィラメントの性質を明らかにした後、電子線トモグラフィー法による構造解析を進める。
|