染色体末端に存在するテロメアの制御には、出芽酵母では、Rap1、Rif1、Rif2タンパク質が関わることが知られている。本研究では、テロメア長調節に関わるテロメアDNAとRap1複合体の構造解析を電子顕微鏡法により進めている。 本年度は、テロメアDNAとRap1がin vitroにおいて独立に結合し、隣接する分子の結合状態に影響を受けないこと、また、単離精製したRap1は直径110-130Aのリング状構造をとること等を明らかにし、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のBlackburn教授らとの共同研究としてJournal of Biological Chemistry誌に発表した(JBC 2010)。 Rap1は非常に分解しやすく、これまで精製法の改良を進めてきた。昨年度までの研究から、単分散した分子、凝集体、および繊維状のものが、精製したRap1溶液中に含まれることが、明らかになっている。そこで、この繊維状構造がRap1から形成されていることを確かめるために、GFPを融合させたrap1プラスミドを作製、発現系を構築し、C末端側にGFPを融合させたRap1を精製した。この試料を電子顕微鏡観察したところ、Rap1-GFPの融合蛋白質からなると考えられる繊維状の複合体が多く観察された。同時に蛍光顕微鏡観察も行ったが、この繊維に相当すると思われる構造を確認するには至らなかった。次に、テロメアDNAを加えて繊維のin vitro再構成実験を試みたが、繊維形成の促進はみられなかった。 今後は、テロメアDNAの長さ、配列等を変えて様々な反応条件で再構成実験を進める。また、高分解能蛍光顕微鏡による観察を行う予定である。
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