研究課題/領域番号 |
20579004
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
眞木 さおり 独立行政法人理化学研究所, タンパク質結晶構造解析研究グループ, 研究員 (20513386)
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キーワード | テロメア / タンパク質複合体 / 電子顕微鏡法 / 出芽酵母 |
研究概要 |
出芽酵母のテロメア制御に関わるタンパク質Rap1とテロメアDNAの複合体は、Matotらにより小角散乱、X線結晶構造解析、NMR解析を組み合わせた手法により溶液中での構造が報告された(Nucleic Acids Research 2011)。Rap1分子は、長さ230Aの細長く伸長した形状であり、DNAのらせん軸に対して垂直方向に伸長して形状でDNAと結合していた。この結果は我々がこれまでに電子顕微鏡(EM)で観察してきた構造(約130Aのドーナッツ型)とは異なっていた。そこでより高い分解能でRap1-DNA複合体の三次元構造解析を進めることが重要となり、Rap1とRap1結合部位を4つ持つテロメアDNAの複合体のEM像(負染色像)のデータ収集を行い、単粒子像解析法による構造解析を進めた。 これまでにEM観察から精製したRap1溶液中に繊維状の分子を見出してきたが、この繊維状分子がRap1から形成されているのか同定できていなかった。そこで精製した試料のMALDI-TOF MSによるPMF(Peptide mass fingerprinting)分析を行った。この結果、精製したRapl溶液中には、Rap1分子の他にRap1分解物と大量発現に用いた大腸菌由来のシャペロンDnaKがわずかに混在していることがわかった。これまでにDnaKが繊維状の複合体を形成するという報告はされていないので、我々がEM観察した繊維状分子はRap1である可能性が高い。また、C末端側にGFPを融合させたRap1をEM観察するとRap1同様に繊維状分子が存在していた。通常の蛍光顕微鏡の分解能では、繊維状分子を観察することはできなかったが、理化学研究所の佐甲主任研究員と廣島研究員との共同研究により高分解能蛍光顕微鏡画像解析法を行った結果、GFPを融合したRap1が繊維状の分子であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた電子顕微鏡による構造解析だけではなく、様々な生化学的解析、分子生物学的な実験および高分解能光学顕微鏡による画像解析など多角的に研究が進めることが出来ている。一方、電子顕微鏡法による構造解析に関しては、他の研究課題に時間を取られてしまい、進展状況はやや遅れているように思う。
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今後の研究の推進方策 |
電子顕微鏡によるRap1と短いテロメアDNA複合体の単粒子像解析、繊維状Rap1分子のトモグラフィー撮影および画像解析、GFPを融合させた繊維状Rap1分子の高分解能蛍光顕微鏡画像解析を行い、これまでに報告されていないRap1分子の繊維状構造を明らかにする。データはかなり揃っているがまとめることに至っていないので足りない部分は、積極的に共同研究を進めることで研究を加速させ、成果をまとめる。
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