真核生物の染色体末端には、テロメアとよばれる特異な構造が存在する。テロメアは繰り返し配列からなるテロメアDNAと様々なタンパク質から構成され、テロメアの形成、保護、長さの調節に関わっている。単細胞生物である出芽酵母では、Rap1タンパク質がテロメアDNAに結合し、テロメア長伸長を促進、Rif1、Rif2タンパク質がRap1に結合することで、伸長を抑制すると考えられている。本研究では、テロメア長調節機構を明らかにするために、テロメアDNAに結合するRap1の複合体の構造解析を進めた。 既に精製したRap1がフィラメント状の複合体を形成することを電子顕微鏡で観察しているが、このフィラメントがRap1から構成されていることを明らかにするため、緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合し、蛍光顕微鏡による高分解能画像解析を行った。 本年度は、より高い精度で一分子計測が可能となる光変換型蛍光タンパク質(mKiKGR)を融合させたRap1の発現ベクターを構築し、大腸菌(Rosetta株)による大量発現とRap1-mKiKGR融合タンパク質の精製を行ったが、発現量が少なく、観察に必要な収量を得ることができなかった。そこで、真核生物のタンパク質であるRap1とmKiKGRのコドンを大腸菌での大量発現に適したものへ変えるためにRap1-mKiKGRの全遺伝子人工合成を行い、大腸菌(BL21株)による大量発現を行った。コドンの最適化を行うことで、真核生物由来のタンパク質が大腸菌で大量発現することを確認できたので、このRap1-mKiKGRを精製し、PALM (Photoactivation localization microscopy)計測および電子顕微鏡による観察を行い、Rap1のフィラメント形成能を明らかにすることを目指す。
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