研究概要 |
サツマイモ栽培種(Ipomoea batatas)は、サツマイモ野生種(I.trifida)が持つ自家不和合性と同様の遺伝的メカニズムによる交配不和合性を有しており、このため、自殖および同一のS表現型を示す個体・系統間での交配は不可能であり、交配育種の妨げとなっている。申請者は、これまでのI.trifidaの胞子体型自家不和合性研究において、自家不和合性(SI)系統4系統、自家和合性(SC)系統1系統の自家不和合性遺伝子座(S遺伝子座)を単離し解析を続けてきた。これまでの研究成果府を踏まえ、本年度は、(1)サツマイモ栽培種(I.batatas)におけるS遺伝子型の決定を試みると共に、(2)サツマイモ野生種の各SハプロタイプのS遺伝子座の完全解析を行った。また、(3)S候補遺伝子のコード領域の増幅と発現ベクターへの組込み、組換えタンパク質の合成を行った。 (1)サツマイモ栽培種(I.batatas)におけるS遺伝子型の決定 複数系統のI.batatasのゲノムDNAを鋳型に用いPCRによるS候補遺伝子の増幅を試みたところ、I.trifidaのS_3遺伝子座のS候補遺伝子が確認されたが、他のS遺伝子型については、I.batatas,I.trifida間の共通性は見出されなかった。 (2)サツマイモ野生種(I.trifida)の各SハプロタイプのS遺伝子座の解析 これまでに解析が終了したS_1,S_<10>-S遺伝子座の配列をリファレンスとしつつ、S_<29>,S_3,S_Cの各S遺伝子座を単離し、ABI3100を用いてショットガンシークエンスを行ったが、S遺伝子座領域を連結するには至らなかった。 (3)S候補遺伝子のコード領域の増幅と発現ベクターへの組込みと組換えタンパク質の合成 I.trifidaの各S遺伝子型(S_<29>,S_3,S_C,S_1,S_<10>)のS候補遺伝子の完全長cDNAを単離するため、各系統の柱頭(開花前日)および葯(開花2週間前)よりmRNAを単離しcDNAを合成した後に、PCRにより当該領域を増幅した。得られたDNA断片を用いた大腸菌体内タンパク質発現系により、当該タンパク質の合成を行ない、バイオアッセイに供すべくタンパク質の精製を行った。
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