環境型の低真空走査電子顕微鏡に取り付けたEDX型X線マイクロアナライザーによる元素分析により、キュウリの幼果にみられるブルーム(果粉)には、乾物重換算で10-15%程度の高濃度のケイ素が含まれていることが確認された。同様の分析で、ダイズの幼莢表面の毛には2%程度のケイ素が含まれていた。同じマメ科植物であっても、ササゲなどではケイ素の蓄積が認められなかった。キュウリとダイズにおけるケイ素蓄積量の差異は、キュウリの方がケイ酸施肥による乾燥下での着果数の増加が明瞭であったことと関連している可能性がある。また、蛍光顕微鏡による観察でも、キュウリの葉や幼果の表面における局所的なケイ素の蓄積は、UV光の照射によって生じる自家蛍光で、比較的容易に判別できた。キュウリ以外にも、ウリ科のスイカ・カボチャ・ユウガオなどの葉では、葉毛におけるケイ素蓄積が明瞭であったが、葉毛のどの部位に蓄積するかは、種によってそれぞれの特徴がみられた。また、キュウリ以外には、キュウリのブルームのような、果実表面におけるケイ素の多い構造はみられなかった。キュウリは、台木のカボチャ品種によって、ブルーム形成の程度が大きく異なることから、これらカボチャ台木の根では、品種によってケイ酸トランスポーターの有無が異なることが推測された。ケイ酸施肥によるキュウリの耐乾性向上の効果は、ケイ酸吸収型の台木を用いた場合にやや大きい傾向がみられたが、次年度の追試による確認が必要である。
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