研究概要 |
キュウリは,果実形成の初期から果皮の表面にブルームを形成するが,低真空走査電子顕微鏡(ESEM)に装着したEDX型のX線微量分析装置を用いた元素解析で,このブルーム粒子の乾物重量の10-20%をケイ素が占めていることを明らかにした.さらに,ポット栽培のキュウリで,ケイ酸肥料の施用により,灌水を制限した土壌乾燥条件下での雌花の結実率・収穫までの生存率が向上することを再確認した.近年では,ブルームのないキュウリが国内市場で好まれるため,ブルーム形成を抑制するカボチャ台木品種(通称,ブルームレス台木)が良く用いられている。こうした台木によるブルーム形成能の違いの理由を検討するため,カボチャでケイ酸が蓄積しやすい葉毛(トリコーム)に着目して,ケイ素濃度をX線微量分析装置で測定したところ,ブルームレス台木の品種では,ケイ素が蓄積してないことが明らかとなった.すなわち,ブルームレス台木のカボチャ品種は,根のケイ酸トランスポートターが欠損している可能性が高く,今後,ブルームレス台木品種と通常の品種との交配集団を用いることで,ウリ科のケイ酸トランスポートターについての遺伝学的な解明が容易になることが期待される.また今回調査した品種群では,ブルームレス台木のカボチャ品種は,いずれも,ブルームを形成する台木品種に較べて初期生育が遅かったことから,ウリ科作物においては,ケイ酸の吸収利用が,茎葉部の生育にも影響している可能性が示唆された.一方,莢にケイ酸質の密毛を形成するダイズについても,土壌乾燥条件下でのケイ酸施肥による収量関連形質の変化を検討したが,有意な効果は認められなかった.
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